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蒲菖亭(あべの古書店主人)
蒲菖亭(あべの古書店主人)

2020年06月21日

夏至 日蝕 新月 カセットテープ

夏至 日蝕 新月 カセットテープ

今日(6月21日)は夏至で日蝕で新月だった。

三十三年前の六月、俺は上海にいて中国を横断する列車の中にいてタクラマカン砂漠にいた。
ウイグル族の聖地カシュガルで、カセットテープを三本買った。
俺はウルムチからカシュガルまで沙漠を三日間走るバスの中で、親友となった少数民族から「彼ら」の歌を教えてもらった。
日本語も英語も通じず、中国語を使えば疎んじられてしまう異郷で、俺が憶えた「彼ら」の歌はパスポートとなった。
困った時、こちらの意図が届かぬ時、「彼ら」の歌をうたうとこころが通じた。
テレパシーのごとく意志の疎通が可能になった。
俺はそれを不思議なこととも思わず、夜の九時を回っても太陽が沈まない世界で、「彼ら」の歌をうたい、歌は彼らの表情を穏やかにした。
俺は彼らの敵ではなかった。

俺はカシュガルの広場のマーケットでテープ売りを見つけた。
ミュージックテープだが、すべて家庭用のテープに録音されていて、手書きでタイトルと番号が入っている。
俺には読めない文字だった。
俺は「彼ら」の歌をうたった。
店主が一本のカセットテープを差し出した。それが俺が憶えた歌だと言葉を交わさなくても判った。
それから秘数が記されたテープを二本買った。合計三本。これで聖なる数になった。

三本のテープはずっと行方不明だった。
「平成」の時代には見かけなかった。
たまたま開けた箱から出てきたのはなんの予兆なのか。聴くべきか否か、俺は迷っている。

夏至 日蝕 新月 カセットテープ

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Posted by 蒲菖亭(あべの古書店主人) at 23:59 │日録
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